先週の英会話サークルで、40代の会社員だというKさんが、少し困った顔でこう話していました。
「教材の音声は聞き取れるのに、実際の会話になると急についていけなくなる」
まわりでうなずいている参加者が、何人もいました。
リスニングは、語学の中でも手応えを感じにくい分野です。
単語も文法も少しずつ増えているのに、耳だけが置いてけぼりのように感じる。
そんなもどかしさを抱えている人は、決して少なくありません。
ただ、聞き取れないのは才能の問題ではありません。
耳が英語の音にまだ慣れていないだけ、というケースがほとんどです。
今回は、リスニングが苦手でも無理なく続けられる、耳を育てる小さな習慣についてお話ししていきます。
なぜ英語が聞き取れないのか

まず、聞き取れない理由を知ることから始めます。
原因がわかると、対策の方向も見えてきます。
ここでは、多くの人がつまずく二つのポイントを見ていきましょう。
音がつながって聞こえる
英語は、単語と単語の音がなめらかにつながります。
たとえば
「get it」
は、文字どおりなら
「ゲット イット」
です。
ところが実際の会話では
「ゲリッ」
のように短くつながって聞こえます。
この音の変化を知らないと、知っている単語さえ別物に感じてしまいます。
聞き取れないのは、音のつながりに耳が慣れていないからです。
これは、ラジオの周波数を少しずつ合わせていく作業に似ています。
最初は雑音でも、合ってくると急に言葉が浮かび上がってきます。
速さについていけない
もう一つの壁は、音声の速さです。
頭の中で日本語に訳している間に、次の文が流れてしまいます。
「あれ、今なんて言った?」
そう思った瞬間には、話はもう先へ進んでいます。
訳しながら聞く癖があると、どうしても処理が追いつきません。
実は、聞いた音をそのまま受け取る感覚を育てることが近道になります。
耳を育てる小さな習慣

ここからは、実際に取り入れやすい方法を紹介します。
どれも特別な道具はいりません。
「何から始めればいいのだろう」
そう迷っている人ほど、身近な素材から入るのがおすすめです。
短い素材を繰り返す
おすすめは、30秒ほどの短い音声を選ぶことです。
長い教材を一度聞くより、短い素材を何度も聞くほうが耳に残ります。
同じ素材を繰り返すことが、耳を慣らす近道です。
1日目は全体を聞き、2日目は文字を見ながら確認する。
3日目にもう一度聞くと、前より聞き取れる部分が増えています。
「昨日より聞こえる」
その小さな手応えが、続ける力になっていきます。
シャドーイングを試す
耳と口を同時に使う方法が、シャドーイングです。
聞こえた音声を、少し遅れて追いかけるように声に出します。
自分で発音できる音は、聞き取りやすくなります。
逆に言えば、言えない音は聞き取れないということです。
聞き流しに頼りすぎない
家事の合間の聞き流しも、まったく無駄ではありません。
ただ、聞き流しだけで力がつくと考えるのは危険です。
意味を意識せずに流していると、音は右から左へ抜けていきます。
「ずっと聞いているのに伸びない」
そう感じる場合は、聞き方のほうに原因があるかもしれません。
ポイント
聞き流しは補助的な位置づけにして、1日5分でも集中して聞く時間を別に作ると、手応えが変わってきます。
無理なく続ける工夫

習慣は、意志の強さよりも仕組みで決まります。
続けやすい形を先に整えておくことが大切です。
生活の隙間に差し込む
新しく時間を作ろうとすると、たいてい長続きしません。
すでにある習慣の隣に、そっと差し込むのがコツです。
朝のコーヒーを淹れる数分、通勤電車の一駅分。
そんな決まった行動と結びつけると、忘れにくくなります。
歯みがきのあとに必ず聞く、と決めた人もいます。
完璧を求めない
ここで一番伝えたいのは、完璧に聞き取ろうとしないことです。
正直に言うと、私も英語の音には今でも苦労します。
すべてを聞き取れなくても、話の流れがつかめれば十分な場面は多いものです。
「全部わからないと意味がない」
その思い込みが、かえって挫折を招きます。
7割聞き取れたら上出来、くらいの気持ちが続けるコツですね。
手応えを記録する
聞き取れた実感は、意外とすぐに忘れてしまいます。
だからこそ、簡単な記録をおすすめします。
カレンダーに丸をつけるだけでも構いません。
先月より聞こえるという変化は、続けた人がよく口にする手応えです。
今日から始められること

リスニングは短期間で劇的に変わるものではありません。
けれど耳は確実に慣れていきます。
今日お伝えした習慣を最後に振り返っておきましょう。
- 短い素材を繰り返し聞く
- 声に出して音を体になじませる
- 完璧を求めず、生活の隙間で続ける
聞き取れない時期は、誰にでも訪れます。
それは才能ではなく、耳がまだ慣れていないだけです。
まずは30秒の音声から、気軽に始めてみてください。